ひとつぶ食パン
[名]1斤。2日目はトースト、1日目は何もつけない。耳が薄く、小麦の甘さだけで食べきれる。
朝6時40分、最初の窯から食パンが出てきます。開店は7時。小さな店なので、焼きたてを並べられる数だけ、一日5回の窯に分けて焼いています。
同じパンでも、焼き上がってすぐと、2時間後では表情が違います。食べる時間から逆算して、来る時刻を決めてください。赤い印は、いまの時刻です。
一番窯。耳まで湯気が立つうちに、半分に切って渡します。
いま焼きたて通勤前に寄る人の窯。層が鳴るのは、焼いて1時間まで。
いま焼きたて皮が黒くなる手前で出す、ここの看板。昼のスープ用に。
いま焼きたておやつの窯。あんは前の晩に炊いています。
いま焼きたて夕食に合わせた最後の窯。売り切れたらその日は終わりです。
いま焼きたて毎週水曜はお休みです。窯の時刻は仕込みの状況で前後することがあります。
うちのパンを、辞書の一項目のように書いてみました。言葉で食べたくなったら、時刻表で窯を確かめてください。
1斤。2日目はトースト、1日目は何もつけない。耳が薄く、小麦の甘さだけで食べきれる。
田舎風のパン。ここでは皮を黒くなる手前まで焼く。切ると、気泡が窓のように並ぶ。
折り込み27層。焼いて1時間は、かじると音がする。それを過ぎたら、軽くあぶる。
前の晩に炊いた粒あんを、生地と同じ重さだけ包む。頂に塩漬けの桜はのせない。黒ごまひと粒。
小ぶりの棒状のパン。岩塩を底に敷いて焼くので、底だけ少し塩辛い。ワインにも、スープにも。
バターを多めにした、割れやすい焼き菓子。割れ目に何もつけずに食べるのが店の決まり。
価格は架空のサンプルです(税込)。
前の日の夕方に仕込み、冷蔵庫で一晩寝かせます。朝の窯の香りは、この時間でできています。
小麦は近くの製粉所から。粉の味が変わる季節は、パンの顔つきも変わります。
窯が小さいので、これ以上は焼きません。売り切れたら、その日のパンはもうありません。
パン屋は、朝のいちばん早い仕事です。誰より先に窯に火を入れて、誰かの朝ごはんに間に合わせる。だから店の名前に、時刻を入れました。焼き上がる時間に合わせて、ふらっと来てください。
店主 麦野 ひなた(架空)
住宅街の角にある、小さな白い店です。席はありません。持ち帰りのみ。